北朝鮮でも、名目上ではあるが3級2審制の裁判制度を実施している。
裁判所は、最高裁判機関である中央裁判所と下級裁判所である道(直轄市)裁判所及び人民裁判所がある。その外、軍事裁判等を担当する特別裁判所がある。中央裁判所が全ての裁判業務を監督し、これに対して、最高人民会議と国家主席及び中央人民委員会の前に責任を負う。そして、各裁判所は、該当人民会議の前に責任を負うようにされている。
北朝鮮の裁判所は、通常的な業務以外にも、いわゆる反犯法闘争のための動員任務を遂行している。これは、北朝鮮の裁判所の役割がいかなるものなのかを汲み取る題目である。北朝鮮が犯罪又は法律紛争が発生した現地の住民の前で裁判活動を展開する「現地公開裁判」(通称「人民裁判」と称する。)を行い、彼らの前で直接処断するのも、結局は、裁判所が住民を反法犯逃走に動員しなければならない任務によるものである。
検察所は、中央検察所と道(直轄市)検察所、市・郡検察所、特別検察所で構成され、指示が憲法等に食い違っていないかを監視し、法犯者と法違反者を摘発する等の業務を遂行する。即ち、法犯者を摘発し、これを処罰する以外に、法の遵守の有無と各級機関の指示と決定の適法性の有無を監視する等の特別な業務が付与されている。
北朝鮮は、弁護士制度も認定されている。しかし、北朝鮮の弁護士は、単独で事件を受任して処理することができず、各道単位で組織されている弁護士会を主体にして、全ての活動を行う。各道に組織された所属弁護士会の指示と命令に従い配当された業務のみを遂行し、その代価として所属弁護士会から支給される報酬のみを受ける。従って、被疑者が弁護士から法的助力を受けることが源泉的に制限されている。
裁判は勿論、検事の公訴及び弁護士の弁護を通して行われる。しかし、裁判所と検察所等の司法機関が党に隷属しているために、独自的な決定を行うことができない。そして、裁判業務を担当する裁判員を法律的資格を備えた者の中から任用するのではなく、一般住民中から必要に応じて任意に任用するのみならず、任期も短期に制限されている。
裁判は、原則的に判事1名と「人民参審員」2名で構成された裁判所で行われ、特別な場合、判事3名で構成することができる。
人民参審員とは、北朝鮮特有の制度である。労働者、農民、兵士、勤労インテリ中から選出され、直接事件に対する判断と解決に参与する。これは、陪審員制度と類似しているが、人民参審員が判事と同等に法律適用を行う点で大きな差違がある。
判事と人民参審員は、該当人民会議から選出され、任期もまた、該当人民会議の任期と同一である。しかし、人民参審員は勿論、判事までも任用に対する特別な資格条件置いていないことにより、選挙権を有する17歳以上の全ての住民が判事又は人民参審員に選出され得る。勿論、任期は、形式的には、法的に保障されているが、一定の事由が発生する場合、選出した該当人民会議において解任できるようにされている。
結局、参審員制度とは、党性が強い者を参審員に選出し、党により裁判を統制するための制度的装置と考えられる。
北朝鮮は、原則的に人民裁判所の裁判に対して、道(直轄市)裁判所に上訴・抗議・控訴でき、道裁判所が1審として行った裁判に対しては、中央裁判所に上訴・抗議・控訴できるようにされている3級2審制を採択している。しかし、中央裁判所が1審を行った裁判と特定裁判所の管轄に属する事件でも、直接裁判するか、任意に他の裁判所に移送できるいわゆる「変態的事物管轄」により、事実上3級2審制は、守られていない。
また、裁判所は、捜査段階での強制処分等に対していかなる権限も行使できず、控訴が提起された以後も被審者に対する保全処分の妥当性の有無を審査させられる。一旦、検事により控訴が提起されれば、無罪を宣告されることは難しい。
◇現在まで「公開裁判」存続
北朝鮮は、共産政権樹立以後、強力な統制の雰囲気を拡散させるために、反体制・反社会的犯罪に対して、住民の直接参与を通した死刑執行等の過酷な処罰を行う「公開裁判」(人民裁判)制度を今日まで維持してきている。公開裁判は、各地域別に(主として郡単位)裁判が開かれ、数日前から壁紙公告又は街頭放送で住民参観を誘導する。甚だしくは、工場・企業所勤労者まで作業を中断させて動員するのが実状である。特に、事件に連累した者が居住する人民班住民は、義務的に参加しなければならない。
公開裁判時、死刑が宣告された場合には、初期には、銃殺刑が主流だったが、1984年からは、「悪質反動分子には、1発の銃弾も浪費する必要がない」という金正日の指示により、絞首刑を並行実施してきた。しかし、1992年に入ってからは、反体制・反社会的犯罪に対する処罰を一層強化し、公開裁判時、青少年は、既存の銃殺・絞首刑により処刑するが、成人に対しては、火刑でも処刑している。
一方、北朝鮮当局は、社会主義圏崩壊と共に、各種非社会主義現象が蔓延するや、1992年から、軽微な犯罪に対しても、市・郡単位別に「現地公開裁判制」を導入、施行している。同制度は、強・窃盗及び詐欺犯等、いわゆる非社会主義的犯罪者を対象に平壌を除外した北朝鮮全地域において実施される。通常、犯罪が発生した地域に貨物車2台を並べておき、演壇を作り、周辺の建物の椅子・ベンチを借りて裁判席を作る。弁護士は勿論、裁判官の臨席なしに犯罪者を逮捕した市・郡安全部や分駐所の安全員のみが陪席した中で、安全部長や分駐所長が単独で裁判を進行する。
裁判進行は、捕縄した囚人を連れてきて、犯罪者の人的事項と罪名を簡単に公開し、「共和国刑法○○条により、懲役○年に処する」と公表するやり方で簡単に行われている。
◇裁判のない非公開死刑執行も実施
北朝鮮の裁判は、3級2審制で、判事1名、人民参審員2名で裁判を行い、党で指名する官選弁護人まで置くように制度化されているが、大部分そのまま守られていない。特に、政治犯の場合は、党の決定に従い処理する。死刑を行う場合にも、被疑者に死刑の事実を通報しないまま、ある日突然処刑される。
裁判のない非公開処刑制は、教化所と管理所において主として行われている。教化所の場合を見れば、次の通りである。
先ず、死刑執行の約2〜3ヶ月前から死刑囚を独房に隔離し、食事量を少なくする。死刑執行当日、広場に囚人を集めておき、マイクを通して、「○○○は、○○を犯しながら反省もなく、人民の名において処断する」と罪名を公開した後、絞首刑に処するときは、「ロ」字形態の臨時絞首台により、銃殺時には、2名が各3発ずつ発射し、死刑を行う。死刑後直ちに軍医が空気血管注射を行った後、死体を運び出せば終了する。
政治犯収容所では、大部分、脱出企図者を対象に死刑が執行される。脱出企図者が発生すれば、可能な限り生け捕り、1〜2日間、監禁、共謀者の有無を調査した後、正式裁判なく直ちに銃殺刑か絞首刑により処刑する。この外に、監獄統制に抵抗する者に対して、脱出者として任意に処理した後、死刑執行を行う場合もある。
処刑手続を見れば、通常1000頃、作業場に出てきた収容者を川辺党に集合させた後、脱出企図者を剥ぎ取らせ、保衛部員2名が左右を監視しつつ、椅子に座らせる。管理所長が「反逆者○○○に対する処刑を始める」と宣布し、約5分間、犯罪内容を説明した後、「民族に背反し、反逆の道を歩んだ○○○を刑法に依拠して、銃殺刑に処する」と宣言すれば、執行に入る。現場に準備された木の杭に顔・胸・足等、3ヶ所を捕縛し、金日成父子非難等の反体制的発言を行わせないように口に轡をはめ、布切れで目を覆った後、「民族反逆者○○○に向け、射て」という号令に従い、自動小銃により3回に渡り9発を射撃する。死体は、かますに巻き、待機中の車両で付近の山野に運搬、その後、発見できないように死体を埋めた後、土をかぶせて平地のように平らにした「平土」墓として処置し、収容者達に対する敵愾心を高潮するためのものであり、埋葬地を明らかにして、通わせている。
◇勲章授与者には量刑削減措置
北朝鮮は、各種勲賞授与者を対象に、授与当時、賞金と副賞を支給する以外に、進級及び昇進時、優先的な配慮と共に、老後の「年老保障」(労働力喪失又は男子60歳、女子55歳以上の者)時、一定額の生計費を支給している。また、彼らには、犯罪を犯したとしても、政治犯罪や常習犯罪でなければ、過去に受けた勲章に従い、犯罪量刑まで削減してやる。
削減内容を見れば、次の通りである。
![]() | 功勲(軍功)メダル:900〜1,000ウォンに該当する犯罪量刑削減
![]() 国旗勲章3級:2,000ウォンに該当する犯罪量刑削減 |
![]() 国旗勲章2級:7,000〜8,000ウォンに該当する犯罪量刑削減 |
![]() 国旗勲章1級:10,000ウォンに該当する犯罪量刑削減 | |
一例として、平壌市官吏駅長の場合、貨物列車衝突事故の責任による被害額による処罰時、原則通りに行えば、10年の刑の宣告が通常だが、過去の功労、即ち授与された勲章を考慮して、「経済労働集結所」の無報酬労働6ヶ月に処せられたことがある。
最終更新日:2003/10/25
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